なおと歯科クリニック

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更新日 2017-07-30 | 作成日 2008-05-15

総義歯  咬合高径からのアプローチ

 先生方は総義歯咬合採得を行う時どのような手技を用いますか。一説によりますと『総義歯装着者の98,5%が低位咬合の義歯を使用している』①との報告があります。
 もちろん義歯に何らかの不満を訴えた患者さんが母体での話だと思いますが、この数字をどう捉えば良いのだろうか。

 今回は総義歯調製に於いて重要な作業である咬合採得、その中でも咬合高径にスポットをあてて考察を加えてみたい。

 技工所から届いたロウ堤を口腔内に挿入し削って軟化したり、またあるときは盛り足したり、この面倒な手間が必要なくなります。と言って皆さん素直に信じて頂けますか。

 その種明かしは後述しますが、そもそも何故低位咬合の義歯が出来てしまうのか、無歯顎者はある日を境に突然そうなったのではなく、PなりCなりの原因で歯を失い放置、咀嚼障害を認めた段階で義歯デヴューとなることが多いのではないでしょうか。

 その時既に前歯に頼った咀嚼の為フレアアウトし臼歯部のデンチャースペース失われ始め、薄い義歯を装着する事になる、極端な場合強度を確保するため金属床金属歯、それはそれで良いのかもしれませんが。

 咬合高径が適切であればデンチャースペースが無い筈が無く又、咬合が低くなればなる程側方が厳しくなります。よって無歯顎なるのも時間の問題、この様にその都度適切な補綴をせずに無歯顎に至った場合、咬筋他の咀嚼筋の至適緊張長径が短くなっていると推測できる。

 義歯を使用していない無歯顎者、いわゆる粘膜咀嚼者の場合軟化したロウ堤を入れ咬合させるとワックスが無くなり基礎床だけになっても高いと訴えます。つまり習慣性咬合位に頼った咬合採得を行う限り、悪しきプロセスを経た患者さんは低位咬合の義歯を調製することになると言い切っても間違いではないのでないか。

 勿論習慣性咬合採得を全面否定するわけではなく、適切な咬合高径が確保されている患者さんの場合、咀嚼筋の緊張位を診る触筋法は合理的な手技だと思います。

 皆さんも自分の顔で実験してみて下さい、両手の親指、中指を両側の咬筋、側頭筋の中心部に触れセントリックで咬んでみると全ての指先に筋の緊張を感じることが出来ると思います、そのまま少しでも側方、前方に動かすと四カ所同時に緊張しないはずです。

 さて、我々が大学で、技工士さんが専門学校で習う教科書にロウ堤の高さは前、臼歯部とも歯槽頂から何ミリと書いてありました。考えてみますと全て加齢により吸収、変化する部を基準に設定しています。
 これでは同一個体であっても無歯顎になったばかりの仮に40代、後の80代では全く違う咬合高径の義歯が出来ることになります、無意味なことではないか。

型上の加齢による吸収の影響を受けないランドマークを基準に高さを設定する方法②「目で見るコンプリートデンチャー」           歯科技工別冊1994より抜粋 そこで模型上の加齢による吸収の影響を受けないランドマークを基準に高さを設定する方法が考え出されたのです。「図②参照」先生方も是非一度、技工士さん任せにせず御自身の手でロウ堤を作製してみることをお勧めします。

 今でこそ当然のように行っておりますが、初めてこの数値でロウ堤を作り、試適した時の感動は忘れることが出来ません。あくまで基準値ですので、この基準に収まらないケースもありますが調整が必要であってもほんの僅か、かなりの確率で水平的顎の対向関係の設定に専念できると思います。

 しかし粘膜咀嚼をしていた様な方が、いきなり正しい高さを受け入れるとは到底思えませんし、それなりのリハビリも必要ですが其れについては本会主催の勉強会でも触れられてきたのでここでは割愛させて頂きます。

 ある技工士さんの話ですが咬合が低いと判断した場合基準値まで挙上して義歯作製し、それによってクレームが来たことが無いそうです。私としてはフェイスボウも取っていない症例をラボサイドで勝手に挙上するのもどうかと思うのですが。

 最後に一言、総義歯補綴において咬合とは袋小路ではないか。昨今何々法、何々式と銘打った総義歯調製法が紹介されている、それらすべてを理解しているわけではないが、私の知る限り顎位の設定に趣向を凝らした調製法である。先人達が理想的な総義歯を求め切磋琢磨、研究を積み重ねると、その歩む道は違っても最後に越えなければならぬ山、咬合の登山口に集結している。そんな気のしている今日この頃です。


参考文献
①深水皓三ほか 日本補綴歯科学会東京支部講演抄録集16,1998.
②「目で見るコンプリートデンチャー」歯科技工別冊1994より抜粋

実際は加齢に伴い、咬頭と顎関節の相互に深く関与した摩耗が生じ、咬合高径の減少が進行します。 これによって年齢相応の深みのある容貌が形成されるのですが、病的なものと生理的なものを同じ次元で論ずる事は不可能である為、この論文では加齢による生理的な咬合高径の減少を無視して記述してあります。

※ 本論文は2004年に地元歯科医師会雑誌SOKA DENTAL NEWSに掲載され、
  それに一部加筆修正したものです。

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